就労継続支援A型とB型の違いを詳しく解説!

就労継続支援A型とB型の違いを知ろう

まずは、就労継続支援事務所について知りましょう。
就労継続支援は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つであり、一般企業で働くことが困難な障害者に対して、働く機会や訓練を提供することを目的としています。このサービスには主にA型とB型の2種類があります。

「目的が違うのか?」「障がいの違いなのか?」と疑問に思われる方もいるでしょう。
本記事では、就労継続支援A型・B型のの違いについて詳しく解説します。

就労継続支援A型・B型の目的

就労継続支援A型・B型は、一般企業での就労が難しい方に「働く場の提供」、「企業への就職に必要な知識・スキルを身につけるための訓練の提供」を目的としています。就労継続支援では、働くことがメインになるので、就労移行支援のように「企業に就労するための訓練」や「就職活動の支援」はあまり充実していません。

A型は一般企業への就職が難しい方を対象とし、B型はより重度の障がいを持つ方や体力的に一般企業で働くことが困難な方に向けられています。

事業所によっては、就労継続支援A型・B型を併設しています。また、就労移行支援の併設をしている事業所もあります。併設のメリットは、B型からA型に移行する。A型から就労移行支援へ移行ができるということも可能です。就労移行支援は完全に就職へ向けての訓練になるので、賃金が発生しないので注意しましょう。

就労移行支援と就労継続支援A型・B型は併用できる?

先程もお伝えした通り、事業所によっては併設をしています。しかし、就労移行支援と就労継続支援A型・B型と併用することはできません。A型・B型を利用したあと、就労移行支援へ移行することは可能です。

ご自身の状況にあった選択をするのがいいでしょう。

就労継続支援A型・B型の違い

A型とB型の違いは「雇用契約を結ぶか結ばないか」です。つまり、事業者と利用者の雇用関係が成立しているかしていないかの違いです。工賃はA型・B型ともに支払われます。

A型は「一般企業での雇用は困難な方」で、B型は「より重度の障がいを持つ方」になります。就労継続支援B型は年齢制限がないため、A型の利用条件64歳までに該当してしまう場合にはB型を検討することも可能です。

A型についての詳細や、A型・B型の対象についてはこちら

雇用契約の有無

大きな違いは以下です。

  • A型事業所は福祉と労働の分野にまたがった施設です。利用者と雇用契約を結びます。利用者は労働基準法にまもられます。
  • B型事業所は福祉を中心とした施設なので、雇用契約を結びません。

雇用契約とは、労働者が使用者(雇用主)のもとで労働に従事し、使用者がその労働に対して賃金を支払うことを約束する契約です。この契約は、民法第623条に基づいており、労働者は労働基準法や労働契約法によって保護されます。雇用契約を結ぶことで、労働者は労働保険や社会保険への加入、有給休暇の取得、解雇の禁止などの法律上の保護を受けることができます。

B型は雇用契約を結びませんので、工賃という形で支払われます。また、労働基準法の最低賃金規定は適用されません。障害や体調に応じて「社会参加」や「働く喜び」を感じてもらうこと。必ずしも利益を追求する働き方ではありません。

対象者が違う

A型とB型では対象者が違います。
厚生労働省にはこうあります。

・就労継続支援A型
 一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。

・就労継続支援B型
 一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。

引用:障害者の就労支援対策の状況

また、以下もあります。

【就労継続支援A型事業所】

1.就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者

2.特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者

3.就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者

※平成30年4月から、65歳以上の者も要件を満たせば利用可能。

【就労継続支援B型事業所】

1.就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者

2.50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者

3.1及び2に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメント により、就労面に係る課題等の把握が行われている者

引用:障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス

B型事業所にある「障害基礎年金1級受給者」とは以下の通りです。

他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。

引用:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額

A型の対象者は「就労が可能」な方に対し、B型は「就労が困難」な方になります。

労働保険(雇用保険や労働者災害保障保健)の有無

  • A型には労働保険がある
  • B型には労働保険がない

A型の利用者は、一週間の労働時間が20時間以上になると2つの制度に加入できます。
1つ目は「労働者災害保障保健(略して労災保険または労災)」で、仕事や通勤が原因でケガや病気をした労働者をまもるための制度です。

2つ目は「雇用保険」で、勤めていた会社を辞めてからつぎの会社に就職するまでに必要な支援をおこなってくれる制度です。週30時間以上勤務すると「健康保険」「厚生年金」にも加入できます。

B型の利用者は労災がないため、国は「任意保険の加入と安全衛生管理をできるだけ行いましょう」と、呼びかけています。

有給の有無

  • A型には有給がある
  • B型には有給がない

決まった期間を続けて働くと有給で休める権利がA型の利用者にはありますが、B型の利用者にはありません。理由は有給休暇が労働基準法のルールなので、B型の利用者には該当しないからです。有給休暇は1年目に10日間で、勤務年数が増えるごとに日数が増えていきます。

賃金と工賃の違い

  • A型は、雇用契約を結んで支払われるので「賃金」
  • B型は、雇用契約を結ばないで支払われるので「工賃」

賃金と工賃は、労働に対する報酬を指す用語ですが、法的および契約的な意味合いが異なります。

  • 賃金は、雇用契約に基づいて支払われる報酬を指します。これは、正社員やアルバイトなどが企業から受け取る給与のことです。賃金には基本給のほか、残業手当や各種手当が含まれ、最低賃金が保障されています。労働基準法により、賃金は毎月1回以上支払うことが義務付けられています。
  • 工賃は、雇用契約を結ばずに行う作業に対して支払われる報酬です。主に就労継続支援B型事業所などで働く障害者が受け取るものであり、工賃は生産活動の成果に基づいて支払われますが、最低賃金の保障はありません。工賃は「雑所得」として扱われるため、源泉徴収は行われず、確定申告が必要になる場合があります。

主な違い

  • 契約の有無: 賃金は雇用契約に基づくものであり、工賃は雇用契約なしで得られる収入です。
  • 最低賃金の保障: 賃金には最低賃金が適用されますが、工賃にはその保障がありません。
  • 税務上の扱い: 賃金は給与所得として扱われるのに対し、工賃は雑所得として扱われます。

このように、賃金と工賃はその性質や法的な位置づけにおいて明確な違いがあります。特に障害者支援の文脈では、この違いを理解することが重要です。

まとめ

  • A型は雇用契約を結ぶ。B型は雇用契約を結ばない。
  • A型は就労が可能な人。B型は就労が困難な人。
  • A型は最低賃金が保障される。B型は最低賃金が保障されない。
  • A型は労働保険がある。Bは労働保健がない。
  • A型は有給休暇がある。B型は有給がない。
  • A型は「賃金」、B型は「工賃」

A型とB型にはこのような違いがあります。A型とB型のどちらを選ぶかは、自分の就労能力や生活スタイル、目指す目標によって決まると言えます。また、迷った場合は地域の福祉窓口や事業所に相談してみることをおすすめします。実際に見学することで、自分に合った環境を見つけられる可能性が高まります。